風力をダイレクトに動力として利用した帆走の自動化技術を通して、持続可能な社会の実現に貢献するエバーブルーテクノロジーズ株式会社(本社:東京都調布市、代表取締役CEO:野間 恒毅、以下エバーブルー)はこのたび、同社が参画する国土交通省実施の「令和4年度スマートアイランド推進実証調査業務」にて、2022年9月23日より第1回実証調査を実施いたしましたのでご報告いたします。
同取り組みは、エバーブルーが、酒田市、とびしま未来協議会、NTTデータ経営研究所、東日本電信電話株式会社山形支店(山形支店長 渡会 俊輔、以下NTT東日本)と共に運営するコンソーシアム「飛島スマートアイランド推進協議会」にて採択を受けたものです。離島ではさまざまな社会課題を抱えており、そのうちのひとつが「物流・観光・ゴミ」問題です。
エバーブルーでは、自動操船化ユニット「eb-NAVIGATOR2.0」「eb-CONNECT」および転覆しにくいヨット型ドローン「everblue AST-231」を使い、無人自動操船、運搬・海洋調査、海上パトロールを担当、山形県の酒田市から40km離れた離島「飛島」まで全長2.3mクラスの帆船型ドローンを使い無人操船での自動航行させ、生活物資や海ゴミの運搬、遠隔海上パトロールを実証することが主な実験内容となります。
実証実験は大きな機材トラブルもなく無事終了し、今回の結果をもとに船体に改良を加えて一部の実験について再度年内に実証実験を実施予定です。
長期間の天候不順等に備えて定期船を補完し、将来的な海上物資輸送手段、調査・パトロール手段として無人で自律可能且つ再生可能エネルギーを利用する帆船型ドローンの有用性を検証します。
<2022年9月23日>
本土から飛島へ、無人航行させる際の課題抽出のための航行テスト、酒田港ー飛島 39km中 6km 2時間を無人自動帆走。
5:00 スタート 実験内容共有/搬送準備・運搬
7:30 伴走艇出航/実験開始ポイントへ移動
8:30 AUTOモードによる無人航行開始 2時間、6km自動航行
10:30 天候変化により艇速が想定よりも低く夕刻までに到着できない見込みとなったため、船長判断にて
牽引に切替え移動
13:00 飛島、勝浦到着
<2022年9月24日>
御積島周辺での密漁船などの警備監視パトロールを無人航行船にて遠隔監視することを想定。
遠隔からパトロールできること、不審船や密漁船の発見に有用であることを確認しました。
想像以上に映像はクリアで音声もライブ感があり、マイクから会話することも可能、これに拡声器をつけることで洋上での不審船、密漁船に対し警告を発することができます。
13:00 勝浦から牽引して御積島の実験開始ポイントへ
海況が悪く、風も強く波も高いためスタッフが同乗して安全確保の上実証実験を開始。
波が高い海況でしたが比較的海況のよい島影でリリース、自動航行および遠隔操作を切替ながら島周辺を帆走。帆船型ドローンにはインターネット経由で遠隔からライブ映像、音声の確認やマイクを使って話しかけることのできる「ぎがらくカメラ」を搭載し、港に留まったスタッフが遠隔で島周辺の映像、音声を確認できました。
<2022年9月25日>
島に漂着する海ゴミを海上輸送することを想定。
日本海に浮かぶ飛島には大陸から多くの海ゴミが漂着します。漂着するポイントは大陸側ですが、ゴミを処理するには反対側の港に持っていく必要があり、現在はこの大量な海ゴミを陸路で人力で運び山を越えてからさらにクルマで運び出しており、相当大変な作業となっています。
そこで、海で拾った海ゴミは帆船型ドローンに積載、
海路を使って反対側の港まで持っていき、作業負担を軽減する実証実験を実施しました。
9:00 海水浴場にて海洋ゴミを回収。日本海に面し多くの海ゴミが漂着する荒崎などを見学・下見調査
13:00 帆船型ドローンに海洋ゴミを積載。海況が安定している法木港から勝浦港まで無人での自動航行を実施、無人自動帆走にて運搬できることを確認。
<2022年9月26日>
水産資源管理、保護を目的に予め指定した海域の藻場の水中映像を撮影。
撮影した映像は後日NTT研究所にてAI解析し自動で水産資源の状況を判定、活用可能性を検証します。海上では目標物がなく位置が分かりにくいのですが、GPSを利用した位置情報をもとに何度でも正確に同じ場所を撮影できることを検証しました。
飛島ではアワビやサザエなどの海洋資源が豊富でそういった貝類は藻場とよばれる藻が生息している海域に多くいるため、藻の生育度合いが分かればどれくらいの貝類が生息しているか推定できます。藻は太陽光が届く水深数メーターの浅い岩礁に繁茂しているため、大きな調査船はもちろん、
小型船舶、漁船もなかなか近づけません。
小型の帆船型ドローンであれば近づくことができるため、この課題を解決出来るとの考えから、水中カメラを取付けて水中撮影を行いました。
13:30 法木港集合、曳航して藻場調査海域移動、自動航行を開始。調査海域は指定された藻場エリア内にジグザグの経路を設定し、自動で航行、まんべんなく海中を撮影することができました。
これを3度実施し、調査海域を正確に自動航行できることを確認しました。
この動画はNTT研究所のAI解析にかけることで、自動的に海洋資源の状況を把握することができます。
「スマートアイランド推進実証調査業務」は、離島地域が抱える課題解決のためICTなどの新技術を離島地域に実装することを目的とした国土交通省が進める取り組みで、離島がある地方公共団体と新技術を持つ民間企業・団体が共同で実施されるものです。
令和3年度は全国9箇所で実施され、今回弊社が参画、調査を実施することとなった山形県酒田市(飛島)では、自然エネルギーを活用した島外からの物流サービスを実現すること、人口減少や天候不順といった環境にも柔軟に対応できる持続可能な社会システムを構築することを目指します。
自動航行での海上輸送(運搬)による、高齢化する島社会での島民の肉体的な負担軽減と、島民・宿泊客等の利便性向上による島全体の価値向上、観光客や関係人口の創出などを目的とします。
参考
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chirit/smartisland.html(離島振興課HP)
https://www.mlit.go.jp/smartisland/index.html(スマートアイランド特設HP)
飛島では現在、島外からの物流は唯一の運搬手段である定期船の運航に委ねられており、通常期は1日1便。天候により大きく左右され、年間を通して多くの欠航が起こる状態で島内への物流が限定・一時遮断されることもあります。また人口の減少に伴う、島の海岸へ漂着する大量の「漂流ごみ」の回収と運搬も課題。こういった事象に加え長期化しているコロナ禍により、観光人口・関係人口が減少し、島内の主力産業である観光産業の回復が遅れています。