海上や湖上をベースに活躍する水上ドローン

 水上における機体の進化、実用化に向けた動きも見逃せない。Best of Japan Drone Award 2020 ニュービジネス部門で審査員特別賞を受賞したエバーブルーテクノロジーズは、自然風を動力として自動操船できるヨット、帆船型ドローン「Type-A」を展示した。これは、6月11日に同社が逗子海岸において、自動操船と自律航行の実証実験に成功したことを発表した試作機で、驚くべきことに船艇と左右の浮きは3Dプリンタで製造されている。

 3Dプリンタの活用は、船製造の工期短縮やコスト削減を図ったという点で画期的だが、今回エバーブルーテクノロジーズは、コンテナサイズの大型3Dプリンタ「EXF」シリーズを開発するエクストラボールド社と提携して、量産化およびさらなる効率化を図るという。これまでType-A製造に利用していた3Dプリンタでは、分割出力して中央部で接続・ボルト締結する必要があったほか、積層が水面に対して垂直だった。エクストラボールド社の「EXF-12」を利用すれば、船体を一体化したままで造形することができ、組立工程や塗装工程を省けるほか、積層を水平にでき、水密性を確保したうえで強度アップも図れるという。

 これまで帆船型ドローンの開発と実証実験は、二宮漁協(神奈川県二宮町)の全面的な協力を得て進められてきた。今後は、同漁協で無人魚群探査船としてサービス導入を進め、肉体的疲労の低減や燃料費の削減に役立てたい構えだ。もともとエバーブルーテクノロジーズは、従来の動力船を自動操船技術による自動帆船に置き換えることや、海上の再生可能エネルギーを水素に変換して自動操船ヨットで運搬し海上水素サプライチェーンを構築することを通じて、脱炭素型の持続可能な社会の実現を掲げる企業である。水産業に止まらない、今後の多角的な水中ドローンビジネスに期待したい。

 同じく、今年新設された大型ドローンゾーンでお披露目されたのが、スペースエンターテインメントラボラトリーの「飛行艇ドローン」だ。これは、水上で離発着できる固定翼機で、漁業における広範囲な魚群探知や、海洋調査での活用が見込まれている。1〜2秒で水上から離陸可能とのことで、さほど長い滑走路を要しない。海のほかにも、河川、湖、ため池などでも活用できるとのことで、2020年度中には製品発売予定だ。

 展示されていた試作機では、航続時間は1.5時間、製品化の時点では2時間を目指したいという。GPSを活用した自動航行が可能であるほか、波高1.5mでも離発着できたなど、タフな実績を持つ。さらに注目すべきは、機体全体に水をかけて砂埃や塩などを洗い流せる点だ。

 このように、水中ドローン、水上ドローンは、各産業における現場の課題に即した機体が着々と開発され、実証実験が進められていることが明らかになった。ジャパンドローン2020で展示された以外にも、水中ドローン、水上ドローンは各現場での試用が進みつつある。水中水上における新たなビジネスの芽を、今後も引き続きウォッチしていきたい。